アイデアはどこから来るか? 発想の心得
しかし、アイデアというものは出そうと思ってすぐに出るものではありません。多くの場合、あまり問題を意識していないときや、考えすぎて頭を休めているときに、いい考えが浮かびます。一つ出ると芋づる式に、関連するアイデアが次から次へとあふれ出ることもあります。
こうしたアイデアはどこからやってくるのでしょうか? 真面目な人ほどアイデアが乏しいというのは本当でしょうか? あるいは、関連する専門知識が豊富な人ほど、つまらないアイデアしか出てこないように見えるのはなぜでしょうか?
そこで、私の経験上からいえる「アイデア発想の心得」なるものを述べさせていただきます。あくまで心得(気持ちのあり方や態度のようなもの)であって、方法論とか技術ではありませんが、参考になれば幸いです。
なぜアイデアが必要なのか、問題点を考え抜く
アイデア発想にまず必要なのは、なぜアイデアを出す必要があるのかを考え抜くということです。これは表面上の理屈で理解するのではなく、心の奥底から問題点の解決が必要なのだということを感じ、なすべきことを潜在意識に強くとどめるためです。「必要は発明の母」などと言われますが、「こんなものがあったら…」という欲張りな願いがアイデア発想を促すのです。アイデアは無意識の世界からやってきますから、理屈よりも情動が大切になります。
アイデアの出発点に執着しない
たいていの人はそれなりのアイデアにたどり着くと、自分の考えに惚れ込んでしまうため、その平凡さに気がつかず、最初のアイデアから抜け出せなくなります。まれに、突飛なアイデアに執着するあまり、自分の考えの重大な欠陥を指摘されても受け入れない“個性派”もいますが…。
そこで、初めのアイデアをしっかりメモしたら、そのことを忘れ、まったく異なることを考えるようにすることが肝要です。しかし、それは簡単なことではありません。
周辺領域にランダムにスポットを当てる
人間の意識はスポットライトに似ていて、ひとつのことを考えると周辺がぼんやりしてしまいます。だから、問題点のみを意識しているとそこから抜け出せなくなるのです。真面目に取り組めば取り組むほど、不思議とみんな同じようなアイデアにたどり着きます。そして、「みんながいいと思うんだから、それで行こう」ということになります。私が企画会議で何度も経験したことです。
視点をずらすということは、例えば、女子サッカーの練習に筋トレを取り入れるようなことです。あるいは携帯電話に歩数計を組み込んだり、お財布代わりにしたりする発想も、スポットライトをちょっとずらしたものにすぎません。ケータイはその後、スマホに発展し、歩くパソコン兼ビデオと化しました。このようなことは、発想の段階では素人でも思いつきそうなことです。もちろん、実現するまでには様々な技術的問題をクリアしなければならないものもあるのですが…。
アイデアは対象から離れたときにやってくる
必死でアイデアを考えることは大事です。そして時には、ちょっと意識のスポットライトを周辺にも当ててみる。しかし、それでも斬新かつ有望なアイデアはそう簡単には生まれません。
ところが不思議なことに、同じことを考え続けることに疲れて他のことをやっているときに、新しいアイデアが浮かぶことが多いものです。
私の場合は、トイレの中とか、通勤電車でまったく関係ない本を読んでいるときなどに、デスクの前では思いつかなかったことが頭によく浮かびました。そういえば、ベッドに入るといい発想が生まれる、という有名人もいましたね。散歩もアイデア発想に効果がありそうです。
アイデアのメモについて
いつどこでアイデアが浮かぶかがわからないので、メモの用意は欠かせません。私は、電車の中で思いついた新商品をしっかり記憶したつもりでいたのに、会社に着いてメモをしようとしたときにまったく思い出せなくて、悔しい思いをしたことがあります。
アイデアが出た直後は誰でもその発想に酔っていますから、客観的な評価はできません。その意味でも、しっかりしたメモを取っておく必要があります。
やっと絞り出した「素晴しいアイデア」の多くは、あとで検討してみると「つまらないもの」になり下がっています。でも、何日か寝かしているうちに熟成してくるアイデアもあります。また、つまらないアイデアでも、他のアイデアと化学反応を起して面白いものになることもあります。
なお、キーワードを2つくらいメモすれば思い出せるだろうと考えるのも危険です。自分が思いついたことなのに詳細が思い出せないことがけっこうあるのです。また、ボツにしたアイデアのメモをすぐに捨てるのも考えものです。別の機会に、別のアイデアのヒントになることがないとはいえないからです。アイデアの“廃品利用”も時には有効です。
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