脳を鍛える脳力トレーニング
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百ます計算よりも
虫食い算が脳の活性化に効果的

 

単純な計算の繰り返し「百ます計算の効果」とは

「百ます計算」は当初、中高年の認知症対策として劇的に広がりましたが、今や子供の基礎トレーニングとしてもさまざまな教材が作られています。

 ブームに火をつけたのは脳科学者の川島隆太教授です。「難しい計算問題よりも、やさしい問題を繰り返し続ける方が、脳の血流が良くなる」という意外性が受けたのでしょう。だれでも認知症は怖い。でも、どんなことをしたらボケが防げるのか…。そんな不安に見事に応えたのが「百ます計算」だったのです。

 「百ます」とはご存知の方も多いと思いますが、簡単に説明しますと、縦横10個ずつのマス目(空欄)があり、その上部と左側に数字が書いてあって、それぞれの数字の行と列が交差する空欄に2つの数字を計算した答えを書いていきます。合計100問あるわけですね。問題は足し算、引き算、掛け算、割り算に分かれています。

 「百ます」では縦横どの列(行)も片方は同じ数字ですから、当然、ランダムな配列の問題に比べてやさしくなります。しかも、数は大きくても片方が二ケタまでの計算ですから、小学4年生くらいまでの算数基礎トレーニングには最適です。そして、長い間、暗算という作業には無縁で、計算を電卓に頼ってきた大人たちにとっても、格好の右脳トレーニング教材になるかもしれません。

脳の血流を良くすることは、脳の性能アップにつながるか?

 さて、「百ます計算」が脳の血流を良くするとして、それが本サイトのテーマ「脳を鍛える」ことにつながるかというと、問題があります。脳の専門家の中には、「?」マークをつける方もいらっしゃいます。
 
 皮肉な見方をすれば、ストレッチ体操やウォーキングでも、全身の血行が良くなって脳の血流が増すでしょう。「血行を良くする食べ物」というものあります。また、今はやりの半身浴も、美容健康にいいだけでなく、脳にもよさそうです。でも、「脳に良い」ことイコール「脳の性能アップ」といえるでしょうか? 脳の血流が頭脳に及ぼす効果は、「科学的には未だ未解明」なのです。うかつなことは言えません。

 もっと素朴に考えてみましょう。簡単な計算問題がどんなに素早く正確にできたとしても、算数文章題のような考える問題を解くことにはほとんどプラスにはなりません。それはそれで、また別のトレーニングをしなければならないのです。

 百ます計算はあくまで脳の基礎トレーニング。スポーツでいえば、ウォーミングアップの体操にすぎません。ウォーミングアップだけで、体力をつけられると考える人はいないでしょう。ウォーミングアップを終えたら、次のステップに進むのが効果的なのは、脳も筋肉も同じことです。

非言語的推理能力を鍛えるには、虫食い算がいちばん!

 
 人間が人間たるゆえんは、五感を通して得た情報から、すでに獲得した知識や思考技術を駆使して「推理する」能力を持つことです。推理能力には言語的推理能力と、それ以外の非言語的推理能力があります。

 計算は、機械的に覚えた一ケタの加減乗除を基礎に、決められた手順に従って答えを出していくもので、この「手順に従って作業すること」は高度な脳の働きです。でも、そこに推理能力が加われば、さらに高次元の脳を使うことになります。高校レベルの数学では、計算問題でありながら、推理能力を要求する問題がありますが、やさしい計算問題では推理脳を使うことはほとんどありません。

 まして「百ます計算」は、「手順に従って計算する」というレベルでさえありません。これでは認知症に入口にさしかかっている人のための「リハビリ効果」しかありません。そこが限界なのです。

 しかし、小学校の算数レベルの単純な計算でも、虫食い算となると話は違ってきます。問題によっては、知っていればある程度機械的にできる、微分積分の問題よりも難しいものもあります。それは高度な論理的推理能力が必要になるからです。

 そこで、「百ます計算」で軽いトレーニングをした後は、やさしい虫食い算にチャレンジしてみることをおすすめします。途中で行き詰まることは多々ありますが、完成した時の爽快感は他の大型パズルにも匹敵します。虫食い算は最初の手がかりを発見することがポイントになります。あとはいもづる式に(というわけにはいかない場合も多いのですが)、絡まった糸がほどけてゆく喜びを味わうことができます。そう、推理能力を使って結論にたどり着くことは、人間の根源的な喜び。つまりは、脳が喜び、進化することなのです。
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