複雑な指の運動で脳を活性化
(効果を高めるには…)
ヒトが他の高等哺乳類と決定的に違うのは、10本の指を自在に操ることができることです。指先にはたくさんの神経が集まり、脳に直結しています。そのため指先は「脳のアンテナ」と呼ばれるほどです。その指先の働きをよくすれば、脳を活性化するということは容易に想像できます。
それを裏付けるように、三十年ほど前から「指を使うと、脳細胞が刺激されて脳が活性化する」というさまざまな研究が、国内外の脳科学者から発表されてきました。
私たちの日常生活では、指の運動は、物をつかんだり、筆記用具を使ったり、はさみや包丁を使う程度のことしかしていません。人によってはパソコンのキーボードをたたくという運動もしていますが、それも熟練者にとってはあまり脳の刺激にはなりません。
①両手を同時に使う
②指をすばやく動かす
③ふだん使わない指の動きをする
④指先の皮膚の感覚を鋭敏に保つ
ということだといわれています。
そこで、それらの要素をすべて取り入れた指の体操が考案されています。有名なところでは医学博士・栗田昌裕氏の「指回し運動」というものがありますが、他にもいろいろあります。ただし、日本人によくありがちな、「それさえすれば安心」という思考法に陥らないことです。
指の体操はあくまで脳のウォーミングアップ。「指を回すだけで頭がよくなる」と考える人はいないでしょうが、老婆心までに蛇足をつけ加えました。
脳を刺激しボケを防止する楽器演奏
両手の指先を同時に使うものとしては、楽器演奏があります。特にピアノ、キーボードやギターはすべての指がバラバラに動きますから、脳を鍛えるには効果的だと考えられます。とはいっても、これは素人のレベルの話。プロの演奏家にはあまり効果がないようです。なぜなら、彼らはその楽器に必要な指先のすばやい動きを無意識にできるよう、高度に訓練しているので、脳に負担をかけていないのです。だからこそ逆に、プロは「表現という一次元上の脳」を存分に使うことができるのかもしれません。
絵画、手芸、工作…指先を使う趣味は他にもたくさんある
その点、美術や手工芸などには、物を作る喜びが伴いますから、脳は指先の繊細な末梢神経と連動して集中力を発揮し、大いに活性化するでしょう。
指先をたくさん使う趣味は楽器演奏の他に、絵画(水彩画、スケッチ、クロッキー、イラストなど)や、編物、パッチワーク、ぬいぐるみ、折り紙、洋裁などの手芸、さらには園芸、料理、陶芸、日曜大工、模型工作、囲碁、将棋などが考えられます。
特に絵画や手工芸、料理などは指を繊細に使うだけではなく、アイデアを練り、手順や段取りを考えるなど、前頭葉をフルに活動させます。一石二鳥にも三鳥にもなるのです。指と前頭葉を使って脳を活性化させる趣味、あなたもさっそく始めてみませんか。
これらの趣味は「ボケ防止」につながるとしてよく奨励されていますが、「ボケないために何をしようか」などと後ろ向きの発想を持つことよりも、仕事以外にも生きがいを持つとか、心から通じ合える人の輪を作ろうというような、前向きの発想で取り組むことが大切です。
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