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足の運動が前頭葉の働きをよくする
(脳の仕組み4)

  ヒトの脳が急に肥大したのは200万年前   持久走の獲得が脳にもたらしたもの
  前頭葉と腹側被蓋野(A10神経核)   ジョギング、ウォーキング、片足立ちの効用

 私たち人間が優れた知能を発揮できるのは、意欲、創造、実行などをつかさどる前頭葉の働きによるものです(「脳の司令塔―前頭葉の役割」を参照)。そうなると、どうしたらこの前頭葉の働きを高めることができるか、ということが気になりますね。結論からいえば、意外にも「ジョギングなどの足の運動をするのが良い」という学説が有力になっています。ここでは足の運動と前頭葉の働きについて簡単に説明します。

ヒトの脳が急に肥大したのは200万年前

 私たちの祖先は、およそ500万年前にチンパンジーと枝分かれして類人猿になった、というのが現在の定説です。チンパンジーと類人猿の決定的な差は、ヒトが直立歩行をすることによるものです。そのために脳が大きくなり、とりわけ前頭葉が発達しました。

 しかし、その頃の類人猿の脳の重量はわずか500gで、現代人の1300gには遠く及びません。その後、急激に脳の重量が増えたのは200万年前、推定700~800gの脳を持つ、ホモハビリスという名の人類が誕生してからです。ホモハビリスは樹上から降りて直立歩行に移行したメリットを最大限に生かし、道具を使う暮らしを始めました。そのため、「人類の脳は手を使うことによって発達した」という考えが科学の常識として定着しました。

 ところが2004年に、その定説が怪しくなる出来事が起こったのです。それはある学者が「ホモハビリスの頃から脳が肥大化したのは、猿人が持久走を始めたためだ」という、驚くべき新説を発表したことです。たくさんの化石の分析から、ホモハビリスの骨格が持久走を得意としていることが裏付けられたのです。

持久走の獲得が脳にもたらしたもの

 人類は持久走ができるようになって、狩りの仕方が大きく進歩し、ワーキングメモリー(短期記憶)を使って問題処理をする能力を獲得しました。また、頭を振らずに長時間走れるように体が進化し、重い頭部を支えられるようになったことも、脳の肥大化に役立っています。

 一方、手のほうはというと、ホモハビリスの時代はまだ石の塊をそのまま道具に使うだけで、手を器用に動かすレベルではありませんでした。手が使えるようになったことよりも、直立歩行それ自体の進化が脳を発達させたと考える説のほうが説得力があり、有力な学説となっています。

 狩猟方法の発達によって、ヒトは肉をたくさん食べられるようにもなりました。それによって筋肉が強化されたばかりでなく、筋肉が瞬発力のある速筋と、持久力に向いた遅筋に分化したのも、ホモハビリスの時代からだそうです。それにしても、下半身がヒトの脳を肥大化させ、その司令塔ともいうべき前頭葉を発達させたなんて……長い間、世界中の人類学者が思い至らなかった素晴らしい発想ですね。

前頭葉と腹側被蓋野(A10神経核)

 突然、難しそうな話になります。「腹側被蓋野」なんて聞いたことがない方がほとんどでしょう。でも、別名の「A10(エーテン)神経核」という用語なら、脳に興味のある方は見たことがあるかもしれませんね。

 このA10神経核というカッコいい名前の領域は、脳の中心部にある脳幹の中にあり、神経伝達物質のドーパミンを分泌することで知られます。ドーパミンは「脳内麻薬」などとも呼ばれ、やる気を起こす物質とされています。ただし、このドーパミンが過剰に分泌されると、幻覚や妄想などを引き起こし、やっかいなことになります。

 A10神経核からは神経細胞の軸索が延び、前頭葉と海馬につながっています。前頭葉は一般的には前頭前野の意味で使われることが多いのですが、運動野運動連合野も前頭葉に含まれ、隣り合った場所にあります。運動野には筋肉運動を起こす働きがあり、運動連合野は筋肉運動を調節して器用に動かす働きをしています。

 つまり、脳の司令塔ともいうべき前頭前野と記憶を司る海馬、及び筋肉運動を司る運動野、運動連合野は、A10神経核とつながっているということです。運動野を鍛えればA10神経核の働きがよくなり、前頭前野にも影響するという仕組みです。前述のホモハビリスの時代の化石の研究からだけでなく、最新の脳生理学の研究からもそれが裏付けられていたのです。

ジョギング、ウォーキング、片足立ちの効用

 足を使わないとボケやすいという説があります。実際、病気で寝たきりになった人、腰痛や膝痛などであまり動けなくなった人、あるいは初老性のうつ病で引きこもりになった人などは、ボケるのが早いようです。あなたの周囲でそんな人の話は聞きませんか?

 人類がある時期、急速に脳を発達させた最大の要因が持久走にあるとすれば、やはり真っ先に考える「脳トレ」はジョギングではないでしょうか。大脳生理学の実験でも、週2、3回のジョギングを続けただけで、簡単な脳のテストでの成績が大幅に上がったという成果が発表されています。それも、単純な一桁の足し算をするというようなテストではなく、パソコンを使ったワーキングメモリーを必要とするテストです。

 もちろん、ジョギングを続けるだけで前頭前野が行う高度な創造、計画、実行機能が高まるとまでは言えないでしょうが、基礎となる性能のアップは期待できそうです。特に意欲面ではかなりの向上が望めるのではないでしょうか。何しろ人間は、同じ程度の能力でも意欲のありなしで成果に相当の差が出る動物ですから…。

 なお、ジョギング以外でも足の筋肉を使うものならウォーキング(時々早足をする)や、電車の中でもできる片足立ちなども効果があるといわれています。これらは肥満対策にもなり、生活習慣病防止の効果も加わって一石二鳥です。肥満は脳にも悪いとされていますから、その面でも脳にプラスになります。ジョギングやウォーキングで大事なことは、いろいろコースを変え、周囲の風景を楽しんだり、様々な考えをめぐらしたりすることです。脳を急速に発達させた、原人たちの狩りの状況に近づくからです。

 また、走りながら前頭葉を常に働かせて瞬時の判断が要求されるスポーツ、例えばサッカー、野球、テニス、バスケットボールなども、同様の意味で脳を鍛える効果があるでしょう。

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